こんにちは、院長の向井です。
——いきなりですが、いま上の歯と下の歯は、触れていますか?
本来、上下の歯は、何もしていないときには触れていないのが自然な状態です。
しかし、仕事や家事に集中しているあいだなど、無意識に歯を合わせ続けてしまう——
これを TCH(歯列接触癖:しれつせっしょくへき) といいます。
この癖があると、
「歯がしみる」
「あごのだるさ・開けにくさ」
「頭痛・こめかみの痛み・肩や首のこわばり」
「慢性的な、噛んだときの特定の歯の痛み」
という症状がでるときがあります。 心当たりのある方は、ぜひ読んでみてください。TCHとはなにか?改善できるコツまでお伝えします。
TCH(歯列接触癖)とは?
いま上下の歯が触れているかお聞きしましたが、歯どうしが本来ふれ合うのは、食事や飲み込み、会話のときだけ。その合計は、1日でわずか17.5分ほどとする古くからの推計もあります。裏を返せば、1日のうち23時間以上は、上下の歯は離れているのが本来の姿、ということです。
TCH(Tooth Contacting Habit:歯列接触癖)は、この“歯が離れているべき時間”に、無意識に歯を触れさせ続けてしまう状態です。やっかいなのは、力がごくわずかなため、自分ではほとんど気づけないこと。
グッと噛みしめていなくても、弱い力が長く続くだけで、歯やあご、周囲の筋肉は休まらなくなっていきます。軽い荷物でも、一日じゅう持ち続ければ腕がだるくなる——それと同じイメージです。
TCHが関わることのある4つのトラブル
1.歯がしみる(知覚過敏)
歯の根元に負担がかかり続けると、知覚過敏に関わることがあります。
ただし、知覚過敏はTCHだけで起こるものではなく、歯みがきの圧、酸性の飲食物、歯ぐき下がりなど、いくつかの要因が重なって起こることが多い症状です。
前回の「知覚過敏」の記事ともつながるところですが、「しみる原因は虫歯だけではない」ということを知っておくと、見方が少し変わるかもしれません。
2.歯や詰め物・被せ物への負担
持続的な咬みしめや歯の接触は、歯のヒビ、すり減り、詰め物や被せ物への負担につながることがあります。
「何度も同じところの詰め物が外れる」「歯に細かいヒビが入りやすい」といった背景に、力の問題が隠れていることもあります。
3.歯ぐきや歯を支える組織への負担
持続的な咬合ストレスは、歯ぐきや歯を支える組織への負担になることがあります。
ただし、ここも大切なポイントで、歯周病そのものの原因は細菌性の炎症です。TCHだけで歯周病になるわけではありませんが、炎症があるところに強い負担が加わることで、悪化因子の一つになる可能性があります。
4.あごのだるさ・痛み、頭痛、首まわりの不快感
上下の歯を触れさせている状態が続くと、あごの筋肉が休まりにくくなります。 そのため、あごのだるさ、開けにくさ、頭痛、首まわりのこわばり感などに関わることがあります。顎関節症のセルフケアでも、「歯を離す」「あごをリラックスさせる」ことはよく勧められます。
あなたは大丈夫? お口のセルフチェック
TCHは無意識の癖なので、自分では気づきにくいものです。鏡を見ながら、次のようなサインがないか確認してみてください。
- 舌のふちに歯の跡のような凹凸がある
- 頬の内側に白い線がある
- 集中しているとき、気づくと歯を合わせている
- パソコン作業やスマホを見ているとき、あごに力が入っている
- 朝起きたときに、あごがだるい感じがする
こうした所見は、食いしばりや口まわりの習癖のヒントになることがあります。
ただし、これだけでTCHと決めつけることはできません。気になる症状がある場合は、歯科で全体を見て判断することが大切です。
少し難しく感じるかもしれませんが、要するに「お口の筋肉をリラックスさせて、歯を休ませる時間を作ることが大切」と考えていただければ大丈夫です。
歯科医院でできる対策と、日常での改善のヒント
「癖を治すなんて難しそう」と思われるかもしれません。でも、まず大切なのは気づくことです。TCHは無意識の習慣なので、気づけるようになるだけでも大きな一歩です。
「歯を離す」リマインダー法
パソコン、スマホ、洗面台、冷蔵庫など、よく目につくところに「歯を離す」「力を抜く」と書いたメモを貼ってみてください。
それを見たら、上下の歯を離して、ふっと息を吐く。この繰り返しで、無意識の癖に気づきやすくなります。公的機関でも、日中の食いしばりにはこうしたリマインダーが勧められています。
マウスピース(ナイトガード)
寝ている間の食いしばりや歯ぎしりは、自分でコントロールするのが難しいことがあります。
その場合は、マウスピースで歯を守る方法があります。マウスピースは、癖そのものを完全になくすためというより、歯や被せ物が傷むのを防ぐための装置と考えるとわかりやすいです。
噛み合わせや歯の状態のチェック
「歯がしみる」「詰め物がよく取れる」「あごが疲れやすい」といった症状があるときは、噛み合わせ、歯のすり減り、修復物の状態、歯ぐきの炎症などを含めて確認していきます。
力の問題は、虫歯や歯周病のように目に見えやすいものではありません。だからこそ、症状だけで判断せず、全体を見ていくことが大切です。
最後に
TCHは、忙しい毎日の中で知らず知らずのうちに身につきやすい癖の一つです。
「歯がしみるのは、虫歯だけが原因ではないかもしれない」
「なんとなくあごが疲れるのは、歯を合わせる癖が関係しているのかもしれない」
そんなふうに気づけるだけでも、お口の見方は少し変わってきます。
実は今回のコラム記事は以前に書いたTCHについての記事を加筆したものになります。
元の記事では少し違う角度で書いているので、TCHについて興味を持った方はぜひご覧ください。
TCH(Tooth Contacting Habit)〜歯牙接触癖〜 vol.1
TCH(Tooth Contacting Habit)〜歯牙接触癖〜 vol.2
荻窪ステーションサイド歯科・矯正歯科では、歯を削る・詰めるだけでなく、こうした生活習慣やお口の使い方にも目を向けながら、できるだけ負担の少ない状態を一緒に目指していきます。
「自分も当てはまるかも」と思った方は、どうぞお気軽にご相談ください。お口を少し休ませるコツを、一緒に見つけていきましょう。